肩こり・首こりに湿布（ロキソニンテープ等）は意味がある？──エビデンス検証と鍼灸治療の可能性

湿布（ロキソプロフェン外用剤）は「意味がある」のか？

どう効く？：作用と承認範囲

• ロキソプロフェン等の外用NSAIDsは皮膚から吸収され、局所で抗炎症・鎮痛を発揮。
• 日本の公的資料・承認情報では、「肩こりに伴う肩の痛み」などの筋・関節痛に対する鎮痛が示されている（剤型：テープ／パップ／ゲル等）。

根拠：PMDA 公的資料、製剤データベース（承認効能・用法の範囲）

どこまで効く？：臨床的効果と限界

◎ 期待できる点：痛みや炎症が関与している局面の鎮痛・ADL※1改善。

△ 限界：慢性的な筋緊張（コリ）自体を解きほぐす直接効果は限定的。「コリの根治」を示す強い証拠は乏しい。

⚠ 注意：長時間貼付・多部位貼付・皮膚刺激（かぶれ）・薬疹等の副作用。用法・用量と貼付部位の管理が必要。

※1 日常生活動作（Activities of Daily Living）の略

鍼灸治療の有効性：なぜ改善が見込めるのか

生理学的メカニズム（仮説と実験的示唆）

• 血流改善：筋・皮膚血流増加 → 酸素・栄養供給の改善。
• 筋緊張低下・筋硬度の変化：僧帽筋などで客観指標の変化報告。
• 痛覚調整：下行性抑制系の賦活などによる痛覚閾値の正常化。
• 自律神経調整・ストレス緩和：交感神経緊張の是正がコリの増悪因子を軽減。

根拠：鍼刺激の基礎・臨床研究（全日本鍼灸学会・J-STAGE 等）

臨床エビデンスのポイント

• 頚部痛・肩こり関連で鍼治療の症状改善を示す研究が複数報告。
• 偽鍼比較で特異効果が小さく見える報告もあり、プラセボ成分の混入可能性は否定できない。
• 総合すると、「臨床的には有用」とする報告が多数ある一方で、効果の大きさには個人差がある。

実務的アプローチ：統合的に攻める

1. 痛みが強い／炎症が疑われる局面：外用NSAIDs（湿布・テープ）を用法遵守で使用。
2. 筋緊張・可動性低下が主因の局面：鍼灸治療を導入（週1〜2回から、状態に応じて短期集中→間隔延長）。
3. 再発予防：姿勢・ストレッチ・肩甲帯の筋力・睡眠衛生の介入を併用。

※ 鍼灸は個別評価（圧痛点・筋硬度・可動域・生活要因）に基づくオーダーメイド施術が効果的。

Q&A（患者さん向け簡易まとめ）

• Q. 湿布だけで肩こりは治る？
  A. 痛みの軽減は見込めますが、コリの根治は限定的。原因（筋緊張・姿勢）への介入が必須。
• Q. 鍼灸はどれくらいで効果が出る？
  A. 平均的には数回の施術で自覚症状や可動性の改善を感じる例が多い。
• Q. 併用はOK？
  A. 外用NSAIDsと鍼灸の併用は一般に可能。皮膚トラブルがある部位への貼付・施術は避ける。

参考：安全上の注意

• 湿布の長時間連続貼付や多部位同時貼付は避け、用法・用量を厳守。
• 皮膚症状（かぶれ・紅斑・水疱）が出たら使用中止し、医療機関へ。

根拠・出典（一次情報／準一次情報）

1. PMDA：外用NSAIDsの公的資料（効能・用法・注意）
   https://www.pmda.go.jp/…_Z100_1.pdf
2. KEGG/JAPIC：ロキソプロフェン外用剤の製剤情報（承認内容の参照）
   https://www.kegg.jp/…japic_code=00051320
3. 厚生労働省・安全性資料：外用NSAIDsの副作用留意点
   https://www.mhlw.go.jp/…/000671524.pdf
4. 全日本鍼灸学会：鍼刺激の基礎的資料（血流・筋緊張・痛覚機序）
   https://www.jsam.jp/pdflib/kiso_p1.pdf
5. J-STAGE（頚部痛・肩こり関連の鍼治療）
   非特異的頸部痛に対する鍼治療 ／ 僧帽筋鍼刺激と筋硬度
6. eJIM（厚労省）：肩こりに対する鍼の有効性レビュー
   https://www.ejim.mhlw.go.jp/doc/pdf/h80.pdf
7. （臨床総説）日本内科学会雑誌：緊張型頭痛の病態と治療
   https://www.jstage.jst.go.jp/…_1359/_pdf